最近、読書界隈では滋賀県がアツい。なぜなら先の本屋大賞で『成瀬は天下を取りに行く』が堂々第一位を記録したからだ。
こちらは主人公の成瀬あかりが、自分らしさを貫き通し猛進していく青春小説で、その圧倒的主人公感はもはや暴力と言ってもいい。滋賀県は膳所から助走をつけて、その魅力で殴りつけてくるような本だ。
ところで今日紹介したい本は姫野カオルコ先生の『忍びの滋賀』である。
通過してても気づかない!?NHK朝ドラ『スカーレット』の舞台は、日本一スルーされる県だった!
・実は琵琶湖が何県にあるのか知らない人は多い
・「千葉」や「佐賀」とよく間違えられる
・比叡山延暦寺は京都にあると思われている
・鮒鮨の正しい食し方について などなど・・・・・・おどおどした直木賞作家が、地味でマイナーな出身県の悲哀について、ユーモラスに語ったエッセイ。
小学館HPより
こちらがどういった本かとひとことで説明すると「姫野先生が滋賀県への愛で殴りにくる本」です。めちゃくちゃ面白い。こんな自由にやりたい放題書いていいの?
作中には、京都府民に親でも殺されたかなと思うような、絶妙な奥京都コンプレックスが爆発しまくっていて、土地勘がない人はもちろん、誰が読んでも面白い内容になっています。
そもそもなぜこんなに気に入ったのだろうと考えたところ、おそらく姫野先生の小説のイメージと全く異なったからです。私が姫野カオルコ先生の小説に出会ったのは、これも例に漏れず友人からのお薦めでした。
「濃ゆいんですけど、お好きだと思います…」そう言ってすすめられたのが『ツ、イ、ラ、ク』です。まさにオンナの心のざらつきを緻密に表現してある「濃ゆッッッくて耽美」な小説でした。
もういい!もうやめて!というくらいゆっくり丁寧に心のざらざらを撫でられるような心境になったものです。はい、お好きでした。
なので今回のエッセイのユーモアと突拍子のなさ、そしてひと匙の理不尽さがとても刺さったんですね。
著書の中では、滋賀県名物でのお酒の飲み方から始まり、滋賀が被ってきた艱難辛苦から滋賀県に来たらおすすめのエア旅程まで紹介されており、まるで姫野先生と一献を傾けながら、先生のお話を聞いているような気持ちになります。
お城に入ったら注目は床!できのよくない漫画やアニメや映画に描かれる「まるでウォシュレットを使っているかのような戦国武将」が、いくらフィクションでもあまりにリアリティがないことを、荒削りの床は教えてくれる。
『忍びの滋賀』 P128より
彦根城の紹介ひとつとってみてもこれです。いい。最高。
おすすめの読者はそうですね。滋賀県にお住まいの人はもちろん、京都府民、関東圏の方、後はみうらじゅんさんに読んでいただきたいですね。うん。本当に。
このエッセイを読んでからなんとなく、姫野先生の小説に出てくる特有の「地域が発するうっすらとした息苦しさ」「オンナというアイコンについての解釈」について自分なりにストンと落ちた気がしました。
そしてまだ未読のものも読みたい!!となったので、早速本屋に足を伸ばそうと思います。
今度の週末は滋賀に行こうかな。先生のおすすめルートで、大好きな本と一緒に。
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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